君に染まる(前編)



「なんだよその言い方」



「だって…あたしと違って先輩は、
こういうことに慣れてるイメージが…」



「そりゃ慣れてるけど、
こんなまともなデートは慣れてねぇ…
つーか、デート自体したことねぇよ」



「え、そうなんですか!?」



驚いて思わず声をあげると睨まれた。



「だ、だって、
先輩がデートしたこと無いなんて…」



「お前…
俺のことどんな奴だと思ってんだよ」



「どんなって…」



女性慣れしてて…
関係を持った女性は
数えきれないほどいて…
って、こんなこと言えるわけないか…。



口を噤んでいると、
ため息をつきながら体を起こした先輩。



「…女と会う時はいつも、
ホテルかVIPルームって呼ばれてる
あの部屋ぐらいだったから」



ホテル…。



その言葉に反応してしまうあたし。



そんなあたしに気付くはずもなく、
先輩は続ける。



「だから、
美紅以外の女と出かけるなんて初めてだ。
まあ、出かけたって言っても、
優や卓がいつも一緒だったから
2人っきりは未央が初めてで…
だから、優に言われた通り
とりあえず乗りまくって…」