君に染まる(前編)



獅堂先輩、ここにいるんだよね?



電気もつけずに何してるんだろう…。



不思議に思いながらも
ゆっくりVIPルームの扉をノックした。



ノックをしてすぐに聞こえてきた足音。



その足音がとまると、
ゆっくりと扉が開いた。



「…」



部屋の中から顔を出した獅堂先輩は、
あたしを見ると
何も言わず部屋に入れてくれた。



「…失礼します」



部屋に入ったあたしは
無言で螺旋階段を上がる先輩に
ついていく。



ベッドルームに入ると
窓際に2つのイスが置かれていて、
先輩はその1つに座ると
あたしを見ずに
もう1つのイスを手で叩いた。



座れ…ってこと?



戸惑いながらも先輩の隣に座った。



そのまま、
先輩はほおづえをついて
窓の外をぼーっと眺めるだけ。



何もしゃべってくれない。



「…あの」



沈黙に耐え切れず口を開くと、
あたしを見ずに人差し指を唇に当てた。



黙れ…ってこと…。