受信ボックスを開いて
名前を目にした瞬間、
思考回路がとまった。
【獅堂先輩】
…どうして?
そればかりが頭の中を駆け巡る。
少し震える指先でボタンを押し、
メールを開いた。
〔今すぐ部屋に来い〕
え…どういう意味?
先輩はあたしに飽きたはずなのに…
なのに…どうして呼び出しなんか…。
グラウンドから見える講堂。
その横のVIPルームに視線をうつした。
先輩がなにを考えてるのか
分からないけど…
ここで行かないで終わるぐらいなら…。
「…楓ちゃん、ちょっとごめんね?」
楓ちゃんの腕の中から抜け出し
立ち上がった。
「え?あ、未央!?」
後ろに楓ちゃんの声を聞きながら
芝生の坂を上り、
グラウンドに体を向ける生徒に逆らって
VIPルームに向かった。
グラウンドの周りに比べて
人けの無い講堂周りは少し暗い。
VIPルームでさえ
明かりがついていないから
余計に暗く感じる。



