君に染まる(前編)



受信ボックスを開いて
名前を目にした瞬間、
思考回路がとまった。



【獅堂先輩】



…どうして?



そればかりが頭の中を駆け巡る。



少し震える指先でボタンを押し、
メールを開いた。



〔今すぐ部屋に来い〕



え…どういう意味?



先輩はあたしに飽きたはずなのに…
なのに…どうして呼び出しなんか…。



グラウンドから見える講堂。



その横のVIPルームに視線をうつした。



先輩がなにを考えてるのか
分からないけど…
ここで行かないで終わるぐらいなら…。



「…楓ちゃん、ちょっとごめんね?」



楓ちゃんの腕の中から抜け出し
立ち上がった。



「え?あ、未央!?」



後ろに楓ちゃんの声を聞きながら
芝生の坂を上り、
グラウンドに体を向ける生徒に逆らって
VIPルームに向かった。



グラウンドの周りに比べて
人けの無い講堂周りは少し暗い。



VIPルームでさえ
明かりがついていないから
余計に暗く感じる。