大丈夫、忘れられる…
今なら間に合う…。
何度も何度も、
心の中でそう言い聞かせた。
けど、やっぱりダメで…
あたしの頬を涙が流れた。
…忘れられない。
思い出に…したくない。
「…未央?」
うつむいていたあたしの顔を
心配そうに覗きこむ楓ちゃん。
涙をふきながら慌てて顔をそらすと、
思い出したように口を開いた。
「あ…花火って何時頃なのかなあ?」
「…花火?」
首をかしげるあたしに、
「しまった」という表情を向ける。
「花火なんかあった?
あたしなにも聞いてないけど…」
「あ、か、勘違い!」
そう言った楓ちゃんが
「気にしないで」と
あたしの首に腕を回した時。
ブー…ブー…
メールの受信。
後夜祭を楽しそうに眺める楓ちゃんに
体を抱き寄せられたまま携帯を開いた。



