君に染まる(前編)



大丈夫、忘れられる…
今なら間に合う…。



何度も何度も、
心の中でそう言い聞かせた。



けど、やっぱりダメで…
あたしの頬を涙が流れた。



…忘れられない。



思い出に…したくない。



「…未央?」



うつむいていたあたしの顔を
心配そうに覗きこむ楓ちゃん。



涙をふきながら慌てて顔をそらすと、
思い出したように口を開いた。



「あ…花火って何時頃なのかなあ?」



「…花火?」



首をかしげるあたしに、
「しまった」という表情を向ける。



「花火なんかあった?
あたしなにも聞いてないけど…」



「あ、か、勘違い!」



そう言った楓ちゃんが
「気にしないで」と
あたしの首に腕を回した時。



ブー…ブー…



メールの受信。



後夜祭を楽しそうに眺める楓ちゃんに
体を抱き寄せられたまま携帯を開いた。