君に染まる(前編)






~♪



部屋に鳴り響く携帯のアラームで目が覚めた。

窓から差しこむ朝日は気持ちいいのに、私の気持ちは沈んでる。



…学校…行きたくないな。



そっと唇に触れる。



「…ファーストキス…だったのにな」


好きでもない、あんな人と…。


昨日のことを思いだすと悲しくなってしまい、どうしても起きる気になれず布団を頭からかぶった。



バンッ



部屋のドアが勢いよく開く音。

それと同時に布団をはぎ取られ、お兄ちゃんが耳元で思いっきり叫ぶ。



「未央!!!朝だぞ!遅刻するぞ!!」

「…行きたくない」

うつぶせのままそう言う私の言葉に過剰に反応する。



「なに!?どうした!?いじめられてるのか!?何か嫌なことでもあったのか!?」

黙って首を振った。

「じゃあなんだ!?」



お兄ちゃんに言えるわけがない。




そのまま黙っていると、お兄ちゃんは持っていた布団をあたしにかぶせた。



「兄ちゃんがなんとかしてやる」

「ちょっ…何する気!?」

慌てて布団を飛び出し、部屋から出ようとしたお兄ちゃんの腕を掴んだ。


「俺の可愛い未央にひどいことした奴をぶん殴ってやる!」

「ひどいことされたなんて一言も言ってないでしょ!?」

「じゃあなんで学校行きたくないんだ?嫌なことがあったからだろ!?」

迫るお兄ちゃんにとうとう根負け。


「…分かった。学校行くから、落ち着いて?」



興奮するお兄ちゃんをなだめ、ため息をつきながら支度をした。



私のお兄ちゃん・百瀬吏雄(リオ)は、極度のシスコンだ。