満ち足りない月





でもなぜこんなところに屋敷が?


セシルは冷静になって考えた。



ここに来る途中、この屋敷以外、建物すら見ていないというのに。

なぜここに屋敷が?



セシルは目の前にあるその屋敷を見つめた。


明かりはついていない。人は住んでいないのだろうか。



まずこれは現実なの?夢じゃないかしら…


セシルは首を傾げた。



道に迷ってしまった絶望感で頭がおかしくなったのかもしれない。



しかし目の前に広がる屋敷は確かにそこにそびえ立っている。



夢じゃないのだ。


しかしどこか夢の中にいるような感覚。それがすごく不思議だった。



でもこんな所に屋敷があるのはセシルにしては好都合であった。



もし人がいたら泊めてくれるかもしれない…


それに誰も住んでないならもっと都合がいい。ここなら…


セシルは期待に胸を弾ませた。