満ち足りない月





「何?ここ…」



セシルは立ち尽くした。



目の前に広がるのは木々が一つもない空間。


いや、ないというよりは木が避けているようだ。


そしてそこにあるのは―――



大きな屋敷だった。




青い屋根。レトロな雰囲気のレンガで積み上げられた煙突。

白い壁。大理石がはめ込まれているのだろうか。


まるで小さな城のようだ。



月明かりに照らされ、燦然と光るその屋敷は優美で美しかった。



夜なのに…


いや、夜なのだから美しいのか。



セシルはそんな美しき屋敷に心を奪われた。こんなに綺麗な屋敷は見た事がなかったのだ。