上を向いて見えない夜空を見上げた。 広がるのはただ暗い色をした葉だった。悲しげな、切なげな… セシルはそんな思いを感じた。 なんとなくだが、この木々たちがそう思っているように感じる。 ふと、持っている大きな黒いトランクを握りしめた。 その時、今まで暗かった木々たちの葉がそっと開いた。 月光がセシルの顔を照らす。 「え?」 今まで真っ暗だったのに。 正面に向き直ると森はいつの間にか抜けていた。