満ち足りない月





「……っ!」


ふいに出っ張っていた地面の石に足が引っかかった。

走っていた勢いもあって、そのまま強く転んでしまう。


「………」

地面に仰向けになったままセシルは拳を握りしめた。


「何やってんだろ」


ぼそっとそう呟くと、ふらふらと立ち上がり、服についた砂を落とす事もなく下を俯いた。


「全くだ」

突然だった。聞き覚えのある声が後ろから聞こえたと思ったらこちらに近づいてくる足音がする。