「そうかい?でも女性が一人は心細いだろう。お供しよう」
尚も男は食い下がらない。
一体何なの?
「私、この先で人と待ち合わせてるので」
今度こそ本当に馬鹿な嘘をついてしまった。こんなもの、子供でもすぐに分かる。
どうしよう…
冷や汗がスーッと背中を流れた時だった。
髭の男がにこっと笑った。
「そうですか、連れがいらっしゃったとは。では待ち合わせの場所までお気をつけて」
突然の態度の違いには驚いたが、しつこい女だと思って諦めたのだろう。
とにかくセシルはほっと胸を撫で下ろして、「有り難う」と二人に言うと出来るだけ駆け足でその場を去った。
「……」
二人の男はそんなセシルの後ろ姿を無表情で見つめると、髭の男が呟くように言った。
「追うぞ。恐らく“あの男”の事を知っている」



