満ち足りない月





西へ行こう。

それならあの人達もさすがに追ってこないでしょう。


しかしセシルは気付いた。

もう自分にはほんの少しのお金しか残っていない事に。


この際もう仕方がない。


「適当にその辺を走ってる馬車にでも乗せてもらいましょう」


セシルはボソッと呟いた。

正直、セシルは考え込む事が得意な性分ではない。

これもあまり考えずに出した事だった。


しかしこんな森周辺では馬車はおろか、人影すらないだろう。

しばらくは歩いていくしかないようだ。