森は夜とは違い、穏やかだった。
鳥の声やさわさわと綺麗な音を奏でる木の葉としかほとんど聞こえなかった。
夜のあのざわめいた不気味な雰囲気はもうこの森にはもともと存在しないかのようだった。
それほどセシルが見たこの森の昼は明るさに包まれていたのだ。
「ほんと表情の変わる森。面白い」
風を抱き締めるかのように手を広げ、嬉しそうに笑った。
足は夜とは違い、軽やかに進んでいく。
少しでも顔が見られるのを防ぐ為に持ってきた帽子は日除けにもよかった。その帽子を強い風に飛ばされないように手を添える。
さて、まずは東に行くか、西に行くか。



