満ち足りない月





「じゃあ、さよなら」

セシルは顔も見れないで、置いていたトランクを持ち、早々と入り口の扉の取っ手を持った。


入った時と同じように扉は軋みながら音をたて、ゆっくりと開いていく。


そして、光に溢れた扉の外に向かって、歩み始めた。





最後の言い方はあまりに酷かった。

せめて顔をちゃんと見て……。

って何を考えてるんだか。


セシルは馬鹿馬鹿しくなって首を降った。


こんなのしょっちゅうある別れのほんの一つだ。

こんなに落ち込む必要もないわ。


「よし!」

これから自分の道は自分で歩んでいく。


セシルは屋敷の門を出た。