満ち足りない月





「そして人間は、優れた頭脳と会話、この世界の支配を手に入れた。そしてその代償として、憎しみ、憎悪、裏切り、嫉妬という名の心を手に入れた」


ラルウィルは斜め前に座るセシルを見てニッと笑った。

そして続ける。

「要するにどの生きるモノも必ず良き所と悪い所があるという所だな」



成る程。確かにその通りだわ。

どこかの研究者の詰まらない理論より尤もらしい。


「じゃあヴァンパイアは?その長い寿命の代わりに何が代償なの」

セシルは聞いた。



「ヴァンパイアは…」

ラルウィルはそう言うと一息おいて、続けた。


「長い寿命の代償として、闇にしか生きられなくなった」


その話はセシルも聞いた事がある。

ヴァンパイアは太陽を嫌い、闇を好む、と。