満ち足りない月





ラルウィルはさっきよりも更に大きくアイスブルーの瞳を見開いた。しかしすぐにふっと笑って顔を綻ばせると、

「じゃ、さっそく」

とガタッと席を立った。


「いや、あの…冗談よ!」


セシルはさっきと打って変わっておろおろした表情になった。


まさかこの人、本気で――


「冗談だ」

ははっとそう笑う彼は席を座りながら尚も続ける。


「君も嘘が上手くないな」


貴方に言われたくないわ。


さっきだって、冗談じゃなかったじゃない。


「それで?質問に答えて」

セシルはあくまで平静を装った。


ラルウィルは水を一飲みしながら答えた。


「ご覧の通り、俺達は水は飲めるし、普通の食事も出来る。だから血を飲まなかったら死ぬなんて事はないさ。しかし、飲まなかったら吸血鬼としての力は衰える。それは俺の場合、死に至る」


“俺の場合”?