満ち足りない月





「俺はヴァンパイアだ」


はっきり言った。

真剣な表情で真っ直ぐにこちらを見つめてくる。


パチパチと後ろにある暖炉の火の音が響く。

ふいにその張り詰めた顔が和らぎ、フッと笑う。いや、正確には吹き出した。


「そう言われて驚かないなんてな」


笑っている場合ではないと思うのは私だけかしら?

セシルは思った。


「これでも驚いてるわ」


ただ、唐突過ぎて飲み込めないというのではない事は確かだった。


「本当にそんな生き物がいたなんて…。でも何だか納得がいくというか」


セシル自身、よく分からなかった。