「吸血鬼、ヴァンパイアという存在を君は信じるか?」
ゴクッと飲み込む音は大きかったので、彼にも恐らく聞かれただろう。
「いいえ、信じてないわ」
自らが見てから信じる質のセシルはこういう質問をされた時は必ず即答で、信じない、と言うのだ。自分の目で確かに見たものは、信じる、と素直に言える。
しかし今回ばかりは一瞬ためらった。
けれどやはり“一瞬”であり、確かめたいという思いが勝り、思わずそう言ってしまった。
セシルはちらっと横目でラルウィルを見た。
しかしその表情は頑なに閉ざされたままだ。
一息置いてラルウィルはゆっくりと話始めた。
「そうだろうな。現実はそれを空想上の生き物として例えているだけだ。信じるはずがないだろう」
真っ直ぐな目でこちらを見ている。
話しを聞いていると吸い込まれそうな瞳だ。
「しかし、それらの闇の生き物がいるのは嘘じゃない」
どくん、と心臓が跳ねた音がした。やっぱりそうだ。
彼は嘘をついていなかった。



