満ち足りない月





遅い食事は彼も同じだったようなのだが、ラルウィルは何も食べなかった。


ただ向かい側の席に立ち、セシルが食べている姿を見ているだけである。

彼の後ろにある暖炉の火だけが煌々と燃え、パチパチという静かな音を立てるばかりだ。


しかし流石に黙って見ているだけではない。話も交えての事だった。


暗い森をさ迷い続けたセシルの体力は、自分が思っていた以上に使っていたようだ。

安全な所で寝られると思った瞬間、どっと疲れが押し寄せてきた。

得体の知れない男がいる屋敷が安全だとは決して言えないが。

「ねぇ、何で食べないの?」


セシルの疑問はそこだった。

疲れきったセシルはよく食べる。お腹が空くのが一番我慢ならないのだ。

昔からよく父に言われていたせいかもしれない。

『食べたい時は食べたいと言いなさい。それから沢山食べるんだよ。何でもあるんだから』