しかし不思議とほっと安心したりはしなかった。
良かった。冗談で。
そう思いたかったが、さっきの目を見て、感覚的に分かってしまった事がある。
“彼は冗談のつもりで言ったんじゃない”
だから今そんな"目"をしてるのね。
目の前にいる男のその表情を見て、返すかのようにセシルも見つめた。
そう、彼は分かっていたのだ。
これを冗談のつもりで言ったのではないと。
だから今、そんな風に私を見つめる。
真剣な本当の瞳で。
―――これはラルウィルの最後の忠告だったのかもしれない。
セシルが自分の嘘を見破り、自分の正体が分かっている事に気付いても敢えて言わない。
それは無言の圧力だった。
遠回しに強迫している。



