「えっ…」
言葉を失ったセシルだが、言葉は必要なかった。
彼の急に変わった真剣な顔がそれが真実だと物語っていたからだ。
今度はセシルが目を見開く番だった。
沈黙が支配する中、セシルはゴクリと喉を鳴らした。
目の前にいる男がヴァンパイア…。街で今、噂になっている闇の生き物。ただの噂だとばかりに思っていたのに。
しかしその美しすぎる容姿は確かに人間離れしている。しかし、この男がヴァンパイア…
ラルウィルはまた急にニッと笑った。
「…まあそれは冗談なんだけどね」
この男はよく表情を変える。喜怒哀楽がはっきりしているセシルも違う意味では同じなのだが。
今のラルウィルは先程の言葉とは打って変わって、明るく、からかうような笑みだった。



