満ち足りない月





数日前、掃除をしていてこの部屋を見つけた。


何もない真っ白な部屋で、その空間の中央に置かれていた漆黒のピアノは酷くその部屋の雰囲気に合っており、セシルは思わず見入ってしまった。


そのすぐ後、ラルウィルに呼ばれて部屋を出た為、すっかり忘れてしまっていたのだ。

しかし今日の夢を見て、ふいにこのピアノの存在を思い出し、起きてすぐにこの部屋に来たのだった。


ラルが弾いているのかしら。

セシルはそんな事を思いながら、一つの鍵盤に触れた。


ポーン

細長い音が弾けて、彼女はゆっくりと息を吸った。


この屋敷に来て、もう何十日かは経っているが、その間、一度もピアノに触れることはなく、それどころか音楽を聴く機会すらなかった。

そのため久しぶりのピアノの音はとても澄んで聴こえて、セシルの胸に響き渡った。