もともといろんな書物が散らばっていたその机だが、今はいつにも増して、沢山の資料が机を覆っている。
ラルウィルはその中でも中央に置かれている太く、どっしりとした古い本と、こちらも古く、色あせた一枚の紙切れをじっと見つめた。
『お前の母親、イリアにだよ』
数日前にウルベが言っていた言葉が再び頭を過ぎった。
ラルウィルは静かにその紙切れを撫でるように人差し指を滑らせた。
その時だった。
ふと、雨のザーッという激しい音に紛れて、小さく、静かで丁寧な音色が心地好く彼の耳に入り込んできた。
ラルウィルは控えめに口角を上げ、微笑みながら目を閉じて、そのオルゴールのよえな可愛らしく綺麗な音に聴き入った。
セシルは少し埃をかぶった鍵盤の中心から端まで指を滑らせた。
人差し指にほんのりと埃が乗った。
しばらく調律されていないかもしれないけれど、弾けるかしら。
セシルは隣にある黒いピアノ椅子にゆっくりと腰を下ろした。



