満ち足りない月





一体私は何をやっているんだろう。

エルの名を名乗って、あの人にその名を呼ばせて、本当の名を言えない事を苦しく思う。


この逃走劇に意味なんてあるのかしら。




「エル………私は間違ってる?」


小さな小さな届かないその言葉は誰にも聴こえる事はなかった。


セシルは目を覆っていた両手を腰元に持ってくると、ぐっとベッドを押して起き上がった。

その時、ふとある音がずっと流れていた事に気がついた。


そして完全に閉じ切っていない淡いオレンジのカーテンの隙間をじっと見つめた。



「雨………嫌いだわ」















ラルウィルは太い糸のように絶え間無く降り続ける雨を書斎の窓から見つめていた。


今日は庭園の花達のに水やりをしなくてもよさそうだ。

けれどこうまで激しく降っていたら、茎が折れてしまったり、花びらが散ってしまわないか心配になる。


ラルウィルは表情を曇らしながら、視線を横にある机へと移した。