「そんな事を聞いているのではない」
父の酷く怖い声が真後ろから聞こえてきた。
「家の使用人達から、お前があの子に遊びをさせたり、おかしな事をさせているという事は聞いていた。たかが家庭教師の分際で出過ぎた真似をするな」
セシルはまるで自分に怒りが向けられているかのように心臓がぎゅっと縮まるのを感じた。
凄みの効いた低い声。
昔から娘とあまり会話をしなかった父で、たまに口を開くと出るのは成績や習い事の様子を問う話。
その為父はセシルにとってただ怖い存在だった。
そんな父が今は怒りをあらわにしている。
セシルは怖くて仕方がなかった。
だから、
違う。エルのせいじゃない、私が望んだ事なの。
その一言は出せなかった。
しばらくしてエルの声が聞こえた。



