満ち足りない月





「すぐに手を洗ってきなさい」

こんな大きな声を出す父を、セシルは初めて見た。


セシルは気が動転して、返事を返す余裕もなく扉へと走って言った。

その目には少しばかりの涙が滲んでいる。


扉を抜けて、右へ曲がり、角に差し掛かったところで少女はある事に気が付いた。


私が勝手に泥だんごを作っていて手が汚れただけなのに、エルのせいにされるんじゃないかしら。


セシルはその嫌な予感に、溜まっていた涙も収まり、今度は青ざめ、顔が引き攣った。


私のせいでエルが怒られちゃう。

そう思った瞬間、セシルの足は自分の部屋へと向かっていた。