「君、面白いね。てっきりアイツ等の……ックク。面白い」
ラルウィルはそう言うとまた笑い続ける。
「それに…俺が何処の誰なのかも分からないのに」
確かにそうだ。こんな不気味な屋敷に入り、そこに居る男にいきなり泊めてくれ、なんて本当に変だ。
しかし、セシルにはそれだけの理由があった。引くわけにはいかない。
「ええ、分かってるわ。でも他に行く場所がないの。どうしても私は逃げなければいけない。お願い、一晩でいいの。ここに泊めて下さい」
セシルはソファーに座りながら頭を下げた。
この時、頑固で自分の意見を曲げないセシルにとって、頭を下げるのは初めての事だったのかもしれない。
しばらくすると頭を下げたままのセシルの上から、ラルウィルの静かな声が降ってきた。
「なぁ、エル。君は俺が人間に見えるか?」



