満ち足りない月





この子、見た目よりずっと芯が強い。

それに私より遥かに年上で大人びて見える。


「有り難う」

その言葉で、私はやっと気持ちを固められたわ。

セシルはしっかりとレイルを見つめた。


「いいえ」

レイルはにっこりといつもの彼らしく微笑んだ。












「では行くぞ、レイル」


ウルベはそう言って黒のレースの日傘を持つと、セシル達に背を向けた。

その後をレイルが小走りに追いかけてゆく。


「ビリヤード、楽しみにしてるわ」


セシルはそっと少年の後ろ姿に向かって笑顔を見せる。

するとレイルは立ち止まり、振り返った。

「僕も楽しみにしてます」


そして彼らしく微笑み返した。