満ち足りない月





「それで、何でこんな所に若い娘が一人いるのかな?」



座ったセシルを見て、ラルウィルはさっそく話を切りだした。

あくまで慎重で丁寧な問い方だ。自らもソファーに座り、膝の上で手を組んでいる。



セシルは急に改まったように背筋を伸ばし、拳を膝に置いた。

何かをお願いしたり、緊張している時にするセシルの癖だ。



「ここに泊めてほしいの」



真剣な表情で言うセシルに対して、ラルウィルが大きく目を見開いたのが分かった。



そしてもう一度セシルの言葉を繰り返すように「泊まる?」と呟くと、今度は腹を抱えて大きく笑い出した。



笑い続けている目の前の男にセシルはただ呆然と見ているだけだった。


彼は笑いが止まらないらしく、ひいひい言いながらまだ腹を抑えている。



セシルはそんなラルウィルを見ていて、だんだん恥ずかしくなってきた。そんなに可笑しい事を言ったのだろうか。