満ち足りない月





レイルの答えは即答だった。

「人は僕を見捨てました。僕には人の方が怖い存在なんですよ」


淡々とした少年らしくない口調で、セシルは思わず背筋が伸びてしまうのを感じた。


しかしレイルのそんな表情はすぐに消え、いつもの控え目で、あどけない顔に戻っていた。

「なんて小さい頃は思っていたんですけど、今はもうそんな事は思っていません」


セシルは静かに話しを聞いていた。


「僕はラルさんのあの時の言葉に救われてから、またアネモネや人を好きになる事が出来ました。この世は悪い人間ばかりではないんですよね」


風がそっと吹き、天井がさらさらと靡かせながら、葉と葉が重なる音がした。


レイルは穏やかな声で続けた。


「だから僕は思うんです。人や種族なんて関係ない。誰かを想う心は誰かを指定する必要はないはずだと」