満ち足りない月





「時々、お二人同時にたまたまいらっしゃる時があるんですが、仲が良い感じで」


レイルは面白そうにくすっと笑った。

すると、はっとしたように顔付きを変えた。そして遠慮がちで、控え目な彼の表情に戻る。


「すみません、ベラベラと一人で話してしまって」


申し訳なさそうにこちらを見つめるレイルに、セシルは笑みを見せた。

「全然良いわよ。けれど……」


セシルの表情が真剣な面持ちに変わった。


「怖いとは思わないの?人ではないあの人達が」


失礼で、酷い事を問うているのは分かっていた。

しかしセシルは無神経にこの事を聞いている訳でなかった。


レイルが人間だと分かった時、化け猫である彼女に忠誠を尽くし、狼男やヴァンパイアを兄のように慕うこの少年が、どんな事を思っているのか知りたくなった。


それは一人のヴァンパイアを愛してしまった自分に対してへの問いだという事に、セシル自身気付いてはいない。