「ラルさんですか?」
人懐こそうにレイルがひょいと顔を覗き込んだ。
セシルは少し驚いて、その拍子にうっかり漏らしてしまった。
「あ、リュエフさんよ」
セシルは言った後、レイルが目を丸くしたのを見て、しまったと思った。
もしかしてリュエフはあの時、違う人の事を言っていて、リュエフとシンシアという人物は知り合いでないかもしれないのに自分がそんな事を言っては嘘をついた事になる。
しかしセシルが思っている事は検討違いだった。
「リュエフさんにも会われたんですね」
レイルはにっこり笑ってそう言った。
「あの方も時々、屋敷に遊びにいらっしゃるんです。ほとんどがお嬢様が頼んだ配達物を運んで来て下さっているのですが」
楽しそうにレイルは話すと、続けた。
「面白い方ですよね。時間がある時は自分の体験した話をして下さったり(ほとんどが女を口説いた武勇伝)、不思議な物をお土産に持ってきてくれるんです」
リュエフも何だかお兄さんのように思っているんだろうなあ。
セシルは話しているレイルを見ながらそう思った。



