満ち足りない月





恐らく二人が言っているのは同一人物だろう。


シンシアさん…

ラルを取り巻く人達の共通の知人。

ラル本人ともやはり友人、という関係なのだろうか。


やはりセシルが一番に気にしたのはその点だった。

シンシアは女性であるようだし、その人物を語る人達の目は優しく、彼女がとても素敵な人だというのは伝わってきた。


ラルの好みはまだ分からないけれど、きっと男性は誰でもそんな女性に憧れるだろう。


セシルは段々心配になってきた。



「あ、すみません。知らない方に似ているなんて不快でしたよね」



レイルが慌てて控えめに言った。

どうやらセシルの表情は、彼にはそう見えたらしい。


すると、セシルの方も慌てて訂正するように手を振った。

「違うの違うの。ちょっとそのシンシアさんのことが気になって……。前にも彼女の事を聞いた事があるから」


それは確信ではなく、しかもほんの一言しか聞いた事はなかったが、セシルはそう言うしかなかった。