「けれど彼女は可愛い猫よね。あんなにひたむきに彼を想って」
「ええ、そうですね」
レイルは控えめに微笑んだ。
そして少し考えるように前にある花達を見つめる。
しばらくの沈黙の後、レイルがふふっと笑みを漏らした。
「何だかエルさんと話していると、ある人が浮かびます」
「ある人?」
セシルは不思議そうに聞き返した。
レイルはセシルの方へ振り向くと、頷く。
「その方、シンシアさんは時々お嬢様の屋敷を訪ねてくるのですが、とても強く、正しい人です。僕が小さい頃にはエルさんのように絵本を読み聞かせてくれました。その時の聞いていると落ち着くような声が何だかエルさんと似てるなって」
懐かしそうにそう言って微笑むレイル。
セシルは前にも同じようにそう言った人を思い出した。
『――全くほんまにそんなとこまで似とるんやから』



