「ごめんなさい、何しろ小さい時に聞いてた絵本だったからうろ覚えで、途中抜けているところもあると思うわ」
申し訳なさそうにそう言うセシルをよそにレイルはにっこり笑った。
「いえ全然大丈夫ですよ。エルさんの語り手、とてもお上手でした」
「有り難う」とセシル。
「でも、小さい頃、どうして何十年も化け猫は彼を愛し続けたのか、分からなかったわ。一度助けて貰っただけなのに」
セシルは遠くを見つめるように静かに言った。そして続ける。
「けど今は分かるわ。……孤独だったのよね、彼女は。そんな時に助けてくれて本当に嬉しかったのね」
セシルは言いながら自分を化け猫と重ねている事に気がついた。
しかし同時に種族が違う者に恋をした化け猫のはかない想いが届かなかった事にも。



