「じゃあ、あそこのベンチに座りましょうよ」
セシルは屋敷とは反対側にある、大きな木の下にあるベンチを指差した。
歯をいっぱいに茂らせた傘のような木は、幹も直径2メートルはあるだろう太さで、その側にある白いベンチはより一層小さく見えた。
ベンチはだいぶ前からあるものらしく、風や雨にあたった影響で色はほとんど薄れ、剥げていた。
レイルは「はい」と返事をすると、セシルと共にベンチへと足を運ぶ。
ベンチに座ると、ちょうど木の傘のおかげで木陰が出来ており、風も涼しく体に当たった。
「むかしむかしあるところにわるいわるい化けねこがいました」
一つ一つの記憶のパズルを嵌め合わせるようにセシルの静かな語りが始まった。
涼やかな風を感じながらセシルの声が心地良くレイルの耳に入ってくる。
―――ねこはさまざまな生きものに化けられるのをいいことに、人間にいたずらをしつづけました。
たとえば、鳥になって指輪のような小さな物をぬすんだり、猿になって食べ物をちらかしたりしました。



