満ち足りない月





ペイカ……

首都から少し離れた街だわ。

あそこまでならまだお父様の手も回っていないはず…


セシルはほっと胸を撫で下ろした。


「それがどうかしたんですか?」



レイルが不思議そうに覗き込んだ。


セシルはすぐに慌てた様子を見せないように必死で平静を装う。



「私がいた街に伝わる化け猫のお伽話をレイルも知っているかなあ、と思って」


我ながら下手な返しだと思った。


これでは自分がいた街が分かられてしまうというのに。



しかしそんなセシルの焦りに気付かず、レイルは意外な反応を見せた。


「そんなお伽話があるんですか。ぜひ聞いてみたいです」


レイルは小さな子供が母親に頼むそうに楽しそうに言った。


セシルはまたも心の中で安堵の息を漏らすと、「いいわよ」と笑顔で答えた。