「屋敷のこの庭園に赤いアネモネを見つけて、僕が眺めていると、ラルさんが話し掛けてくれました。“この花が好きなのか”」
そう言うとセシルの顔を見て、レイルは軽く笑ったが目は笑っていない。
セシルは険しい顔をして彼を見つめた。
「“大嫌いな花です”僕がそう答えると、ラルさんは言いました。アネモネの花言葉は“孤独”そして“君を愛す”、だと」
レイルはしゃがみ込んで、アネモネの花にそっと触れた。
「毒性のある花だから悲しい言葉が多いけれど、切ない恋を謡った花言葉もある。素敵な花だよ、と」
愛しそうにアネモネをそっと撫でた。
セシルはその後ろ姿を見つめる。
「涙が出たんです。それまで一度も流す事のなかった涙が。本当に本当に嬉しかった。母がどういう意味で僕の側にこの花を置いたのかは分からない。けれどそんな意味で置いてくれて、本当に僕を愛してくれていたのかもしれない。そう思うと本当に嬉しかったんです」
少年の顔を覗き込むと、そこには満面の笑みを浮かべる少年の顔があった。



