セシルは大きく目を見開くと、ゆっくりと立ち上がった。
「ほかには“見放される”なんて言葉もあるんです」
セシルは心配そうにレイルを見つめたが、少年は尚も穏やかな声で続けた。
「小さい時からずっと飾ってあったこのアネモネの花が僕は大好きで、枯れても枯れてもウルベ様はその花を絶えず変えるように言うんです」
セシルは俯いた。
レイルの口調は変わらない。
「そして八歳の頃、この花が捨てられていた時に共にあったと聞いて、僕はこの花の花言葉を調べようと思いました。けれど幼い僕にそんな事は出来なくて、僕はいつも通っていた図書館の事務員に聞きました」
セシルは再び顔を上げた。
レイルと目が合う。
「“絶望”“見放される”
するとこんな言葉を言われるんだから、ほんとまいっちゃいますよね」
ははは、と空笑いをするレイル。
「その時にようやく気が付いたんです。ああ、僕は望まれて生まれてきた子ではなかったんだ。母は自分を愛してはいなかったのだ、と」
アネモネの花がゆらゆらと揺れる。
レイルは下を向いて、アネモネを見つめた。



