満ち足りない月





「いえ、こちらこそ」


横顔で優しく笑う少年。

こんな少年でさえも悲しい過去をしょっている。


こうやって笑うのに随分時間はかかっただろう。


それはリュエフやラルウィルも同じ事が言えた。



それなのに、今私がしているのは逃げているだけのただの現実逃避にすぎないのか。


何不自由なく暮らしていたのに、その場所から逃げるという行為はやはり罪なのか。


それでもセシルの頭に"帰る"という考えは浮かんで来なかった。



「エルさん、僕、庭園を見に行ってきます」


ふいにレイルの声が横から聞こえた。


その声で自分がまた考え事に更けていた事に気が付いた。