満ち足りない月





右に曲がって、今度は階段に差し掛かっていた。


「なぁ、エル。君は両親がいるのか?」


不意にラルウィルは背を向けたまま口を開いた。



突然の質問にセシルは不意を突かれた。



どう答えるべきか。本当の事を言うべきか。


一瞬、迷ったが何故か寸なりと答えた。



「いるわ」





……本当の事だった。


両親はいる。でも只それだけだった。そう、それだけ。


また拳を強く握る。



「そうか」

たった一言だった。


背を向けて只、呟くように。