満ち足りない月





"むかしあるところにわるいわるい化けねこがいました"


何度も何度もメイドに頼んで、寝る前に読んでもらった物語。


今でも所々は空で言えるなあ。


そんな事をしみじみと思った。




「――お嬢様の本来の姿は猫なのです」


カチャカチャと音が鳴りながらレイルは皿を片付けていく。


「しかし自由自在に人間の姿に変わる事が出来ます」



変われるのは人間の姿だけなんだ。


セシルは少しがっかりしたような、複雑な気分だった。


ちょうど雲に乗れると信じていた子供が、乗れないと分かった時のような。



「じゃあ何故人間のあなたが化け猫と?」


セシルはトレイを持つと、扉を開けた。

もう一つのトレイを持ったレイルも部屋を出る。