満ち足りない月





そのレイルの隣で、こちらを見もしない座ったままの少女に内心ムッとする所はあったが、セシルも同じように席を立ち、挨拶した。


「初めまして、ここにお世話になっているエルです」


そう言って微笑むセシルもまたこんなものは慣れたものだった。

数々の社交界に出向き、毎回知らない人に挨拶をする。

愛想する演技はもう得意になっていた。


ただ最近はそんな愛想を使っていない為、少々鈍っているだろうが。



セシルがそう言って席を座ると同時にウルベが立ち上がった。


そして挨拶でもするのかと思いきやラルウィルの方に向き直る。


「書斎を借りるぞ」


「ああ」

ラルウィルがすかさず返事をする。


それを聞くとウルベは扉へと歩み寄り、ドアノブを掴もうとすると動きを止めた。


「ああ、そうだ」


そして後ろを振り返ってセシルを見る。



「廊下の件はすまなかったな」


そう言って扉を閉めた。