満ち足りない月





此処にそれだけの価値があるのだろうか。

そうは全然見えないけれど。


セシルは怪しげに屋敷を見渡した。


絵画なんかが廊下にアクセントとして飾られているが、そのどれもがセシルが見た事もないような絵だった。



風景画が多く、この屋敷の全体像を描かれているものもあった。

いろんな角度から描かれた屋敷。


ふと、その中に美しい花で溢れた庭園の絵があった。その華やかさに目を奪われるとセシルは通り際、釘付けで見入った。


この庭の後ろにあるのってこの屋敷?こんな綺麗な庭園なんてあったっけ?



セシルは疑問に思った。



しかしラルウィルはそのままのペースを保って歩いていく。


セシルは慌てて彼を追い掛けた。







それにしても一体私は何がしたいというのだろう。


いくら逃げたって奴らに見つかるのは時間の問題なのに。