満ち足りない月





いきなり現れ、颯爽と過ぎ去ったその小さな邪魔者に、行く宛てのない怒りが沸々と沸いて来た。


「もう」

そして所々に散りばめられた黒い汚れを一つ一つ拭いていく。

汚れ自体は付けられたばかりで拭きやすく、すぐに消える。


そうしている内にふと、気付いた。


「この辺にあんな育ちの良さそうな猫がいたのね」








「お嬢様、どちらへいらしてたんですか」


微笑みながら言う少年。


その少年の元へゆっくりと歩きながら少年よりまだ20センチは低い少女が来る。



「いやちょっといつもと違う気がして少し中の様子を見てきた」

低い声で言いながら少年の横に立つと、目の前にある大きな屋敷を見上げた。



「久しぶりですね、お元気でしょうか」


「ふっ、まあ厄介なものを住まわせているようだがな」


少女は固い表情が消えないままに鼻で笑うと、少年と共に歩き出した。