満ち足りない月





「ところでエル、立ち話も何だろう。書斎で聞こうじゃないか」


まるでこちらが話があるかのような言い方だ。

実際そうだけど…


セシルは多少複雑だったが「ええ」と答えると、案内するラルウィルに着いて行く事にする。



それにしても少し不用心過ぎるだろうか。見知らぬ屋敷に入って、男と二人だけだなんて。

現時点では。

他にも人がいるかもしれないし…


しかし、もうこの森でちゃんとした宿と言えば此処しかないだろう。


一歩外を出れば真っ暗闇の森だ。


また彼処(あそこ)をさ迷う事を想像するとセシルは背筋がゾクゾクした。


しかしこのラルウィルという男は本当に信用出来るのだろうか。


なんか女性に対する扱いも慣れてない?


よくここには若い女性が迷って立ち寄るのかしら。そんな訳はないわよね。



それにしてもこんな暗い森に囲まれた屋敷によく住めるものだ。一人で住んでいるのだとしたら余計に。