それはまたセシルの心に深く突き刺さった。


しかし同時にその言葉は彼女の気持ちを固める事になった。

自然と手に力がこもる。



「確かにここは私の帰る場所じゃありません」


低く口から出た言葉は少し震えていた。


それで泣きそうなのかと心配になったリュエフはセシルの顔を覗きこもうとしたが、急にセシルは顔を上げた。

キッとした強い眼差しでリュエフを見る。



「けれど、私はここにいたいです。いつまでもなんて分からないけれど、彼が出ていけというまで、私はここを出ません」



"帰りたくない"


その思いが、ここにいたいという気持ちを更に大きくしたのだろう。

自分でもびっくりするくらいはっきりした言葉だった。