満ち足りない月





「おっと、見送りはいらんで!…っていっつもないか」


ははっと笑いながらラルウィルに背を向け、書斎の扉に向かって歩く。



「いつも助かってるよ」


その表情の見えない後ろ姿に向かって、ラルウィルは言った。


リュエフはふっと笑うとヒラヒラと手を振り、扉を閉めた。





――――…





バスタイムが終わり、二階にある客間で髪を解かしていたセシルはふいに聞こえた音に驚いた。



コンコン、とガラス窓を叩く音がする。


ここは二階だ。それに手摺りなんかもないのに……



しかしセシルのその恐怖はすぐに消えた。


窓の向こうに見えるのはリュエフだった。



慌てて窓を開けるセシル。