満ち足りない月





―――…



「なるほどなあ。例の"エドガー"がついに動き出したんか」


蝋燭(ろうそく)の火が揺れている。少し太めなそれは少しずつ蝋を溶かしながら部屋に光を灯していた。


「恐らく、な」

低い声で相槌を打つラルウィル。



ここはラルウィルの書斎だった。

日はとうに落ちており、窓の外は真っ暗闇が広がるばかりだ。


と、そこで大きく息を吐きながらリュエフが座っていたソファーにもたれた。


「それにしてもやっぱり手掛かりは掴めそうにないわ」


そう言ってちらっと横目で目の前の低い机にバラバラと置かれている本を見る。



「そうか…それにしても父が持っていた古い本が見たい、なんて驚いたよ」


「まあなあ、ちょっと街で気になる事を耳にしたんや」


リュエフが珍しく神妙な表情を浮かべた。