満ち足りない月





「まあいいさ、とにかくお前、こっからさっさと出てけよ。それから花を踏むな」


ギロリとこちらを睨みつけて、その少年は顔をひょっこり戻すと、中に入って行った。


そしてリュエフは下を見ると、慌てて飛んだ。

狼の脚力は軽々と飛び、一蹴りで庭のふちまで移動した。



花が辺り一面に広がっていた。

ふらふらと屋敷に入った為、気づかなかったが、色んな種類の花がそれぞれ咲き誇っている。


見ると、リュエフの立っていた場所だけ、花が倒れていた。

あれはスミレだろうか。



悪い事をしたなあ。

リュエフはバルコニーを見上げながら思った。