「ほんっまに変わった子やなあ。女の子が男を守る、って…」
そう言ってまた笑い出した。
セシルは言った事の大きさに言った後にじわじわと恥ずかしさが押し寄せてきて、耳まで真っ赤だ。
「でも俺はそういう子、嫌いやないで」
ニカッと笑顔でそう言うリュエフ。
屈託のない笑みを見ながらセシルはなぜかほっと胸を撫で下ろした。
緊張していたのだろう。
もしかしたら手を出すな、立ち去れ、と言われるような気がしたから。
人間なんかがこんな所に、と。
特にリュエフのように明るくいつも笑顔の人が急に険しい表情になった、というのがセシルの緊張していた最大の理由だった。
しかし今はいつもの軽い表情に戻っている。
安心して肩をふう、と下げるとセシルはついでに質問した。
「そう言えばリュエフさんて、少し変わった言葉を使いますよね。それに名前もあんまり聞いた事がないような名前で」
「ああこれね」
リュエフは言われ慣れているのだろう。すぐに反応した。
「狼一族は稀少な種族やからなあ」
リュエフはゆっくりと話し始めた。



